登記事項証明書・履歴事項全部証明書の翻訳|行政書士が対応
【2026年1月31日更新】
海外企業との契約、海外銀行口座の開設、現地法人設立の手続きなどで、求められることが多い書類が 登記事項証明書・履歴事項全部証明書(いわゆる登記簿謄本) の翻訳です。ところが、登記簿の英訳は「翻訳のみ」では足りないことが多いです。提出先によっては 翻訳の形式(翻訳証明・署名・会社印の有無)、さらに 公証(Notary)とアポスティーユ(Apostille) といった“認証”まで指定されることがあり、要件を読み違えると差し戻し・再提出になります。
特に重要なのは、「原本(公文書)」と「翻訳証明書(私文書扱い)」の性質が異なる点です。公印確認・アポスティーユの対象は、「官公署・自治体等が発行する公文書」です。登記簿謄本(履歴事項全部証明書・現在事項全部証明書)は外務省の案内上も“国等の機関が発行する書類”として例示されておりますが、翻訳証明書は異なります。
この記事では、急ぎのご提出にも対応できるよう、想定される提出シーン、用語上の注意点、公証・アポスティーユを要する典型パターン、ならびに依頼時の確認事項(チェックリスト)を、行政書士が実務に基づいて体系的に整理します。

登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の翻訳
行政書士が海外契約・口座開設で差し戻されないための翻訳のポイントを整理
目次
1. どんなときに求められる?(契約・DD・口座開設・現地法人設立)
登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の英訳が求められるのは、海外側が「会社の実在性」「権限関係」「代表者」を確認する必要がある場面です。代表的なケースは、次の4類型です。
1)海外企業との契約・取引開始(Vendor登録・反社/制裁チェック含む)
海外企業が新規取引先を登録する際、法人の実在性・所在地・代表者を確認するため、登記簿の提出を求めることがあります。契約書に署名する権限者が登記上の代表者と一致しているか、所在地や会社名が一致しているか、などが確認されます。
2)デューデリジェンス(DD)・M&A・資本提携
DD(デューデリジェンス)では、商号変更・本店移転・役員変更などの履歴が確認対象となることがあります。この点を踏まえず「現在事項で足りる」と判断して提出すると、相手方が履歴の確認を求める場合に追加提出が必要になることがあります
3)海外銀行口座・決済アカウント開設
銀行・決済事業者は、AML/CFT(マネーロンダリング対策)上、法人の実在性および代表者の確認を厳格に求めます。日本国内の法人取引において履歴事項全部証明書の提出が求められるのと同様に、海外においても同等の書類の提出を求められることがあります(提出形式や要件が厳格になりやすい手続です)。
4)現地法人設立・支店登記・ライセンス申請
現地の登記機関やライセンス当局において、「日本本社の存在証明」として提出を求められる代表的なケースです。この場合、アポスティーユ/領事認証まで含めた手続が求められることがあります。外務省も、会社設立を含む各種手続において、公印確認・アポスティーユが必要となる場合がある旨を例示しています。
2. 実務上のポイント|登記簿の翻訳は提出要件に合わせて準備する
登記簿英訳は単なる「翻訳」にとどまらず、提出要件を踏まえた提出書類として全体を整えることが重要です。提出先が確認したい点は、①会社の同一性、②代表権限、③最新性(発行日・有効期限)、④必要に応じた真正性(認証)です。これらを満たす形で整備することで、差し戻しのリスクを低減できます。
履歴事項全部証明書の英語翻訳サンプル | なないろ証明書翻訳

※本画像はサンプルであり、実在の登記事項証明書の英訳ではありません。また、本サンプルは登記事項証明書の1枚目のみを翻訳したサンプルで、実際には2枚目以降があります。
3. 用語上の留意点と誤解を防ぐポイント
登記事項証明書(現在事項全部証明書・履歴事項全部証明書)の用語は、日英で一義的に対応しないものが多く、直訳すると解釈のずれを招くことがあります。短納期の場合ほど、用語選定と表記統一の観点から慎重な対応が求められます。
1)書類名そのもの:登記事項証明書/履歴事項全部証明書
提出先(海外の機関・企業)では、書類名として “Certificate of Incorporation” や “Company Registry” 等の用語が用いられることがあります。一方、日本の登記簿は「登記記録の写し(証明)」という性格を持つため、英訳では制度差を踏まえて“説明型”の表現で整理するのが実務上は安全です。 例えば、履歴事項全部証明書は “Certificate of All Historical Matters”、現在事項全部証明書は “Certificate of All Current Matters” といった訳語を用いることがあります。
提出先が「履歴事項」を求めているにもかかわらず「現在事項」を提出した場合、必要情報が不足しているとして追加提出を求められることがあります。
- 現在事項:現在有効な登記事項のみを記載
- 履歴事項:現在有効な登記事項に加え、一定期間の変更履歴を記載
- 閉鎖事項:閉鎖された登記事項(過去の履歴確認が必要な場合)を記載
※選定のポイントは、提出先が「現時点の情報」を確認したいのか、「変更の経緯(変遷)」まで確認したいのかにあります。
2)会社の基本情報:商号/本店/目的/公告方法
- 商号:Trade name / Company name と訳し分けることがありますが、提出物としては「登記上の名称」を示すことが目的なので、表記統一が最優先です。
- 本店:通常は、Head officeと訳します。“Registered office” を求める国もあります。住所表記(番地・建物名)の順序は海外の順序に合わせます。
- 目的:Business purposesと訳します。意訳を強めすぎると登記記載との対応関係が不明確になり、確認や追加資料の要請につながることがあるため、原文の趣旨と用語を維持した訳出が重要です。
- 公告方法:Method of public notice は国・地域により概念が馴染みにくい場合があります。原文にない説明を付加するよりも、登記の記載を忠実に訳します。
3)役員・権限:代表取締役/取締役/監査役、代表権
- 代表取締役:“CEO” は誤訳です。会社法上の地位としての “Representative Director” と訳します。
- 取締役:Directorと訳すのが一般的です。国によっては “Board member” のニュアンスで理解されます。
- 代表権:“Authority to represent the company” のように、権限の説明が必要になることがあります。
4)資本・株式:資本金/発行可能株式総数/発行済株式
資本・株式に関する事項は、会社法および商業登記法の用語・概念に基づいて記載されています。英訳にあたっては、原文の法的意味と対応関係が明確になるよう、会社法・商業登記法の用語を正確に訳し、表現の意訳や独自の言い換えを避けることが重要です。
4. 提出先が「公証+アポスティーユ」を求める例
ここは要件の解釈に差が生じやすいポイントです。提出先が求める「認証」の扱いは、主に3つの類型に整理できます。
類型A:英訳のみで足りる場合(認証不要)
提出先が社内確認(契約先のKYC等)を目的としている場合、英訳に加えて翻訳者情報(署名・連絡先等)を付すことで受理されることがあります。ただし、提出形式や認証要件は提出先の指定が最優先となるため、依頼時点で必要要件を確認しておくことが重要です。
類型B:原本(登記事項証明書)にアポスティーユ/公印確認が求められる場合
提出先の要件として、登記事項証明書(原本)に対するアポスティーユ(ハーグ条約締約国向け)または公印確認(非締約国向け)が求められることがあります。この場合は、原本に対して所定の手続を行い、認証を取得します。
類型C:英訳(翻訳文)に公証+アポスティーユが求められる場合
提出先が翻訳文そのものについて公的な認証を求める場合、英訳(翻訳文)は私文書として取り扱われ、外務省で直接の証明手続ができません。そのため、公証役場における公証人の認証を行ったうえで、(地方)法務局長による公証人押印証明を経て、外務省の証明手続へ進む流れとなります。
よくある具体例(イメージ)
- 海外銀行:「登記簿(原本)+英訳に notarization/apostille を付けて提出してほしい」
- 海外法人設立代行:「英訳は certified / notarized translation が必須」
- 海外当局:「ハーグ条約締約国なので apostille、非締約国なので consular legalization」
注意点(要件確認の重要性)
公証・アポスティーユの要否は、国や提出先機関によって異なるだけでなく、同一国であっても用途や審査運用により求められる水準が変わることがあります。外務省も、これらの手続は「提出先機関から求められる場合に申請する」性格のものである旨を示しています。したがって、まず提出先の要求事項(必要書類、認証の種類、通数、期限)を整理し、その要件に沿って必要な手続を選択することが実務上は合理的です。
5. 依頼時の確認事項(版・通数・目的)
依頼後の手戻りを避け、必要に応じて認証手続まで一貫して進めるため、依頼時点で確認しておくべき事項を整理します。要件が明確であるほど、英訳の方針(表記統一・形式)と手続の段取りを適切に組み立てられます。
1)必要な証明書の種別(版)の特定
- 履歴事項全部/現在事項全部/閉鎖事項/代表者事項
- 提出先が確認したいのは「現時点の情報」か「変更履歴」か
例えば、DDや設立関連では変更履歴の確認が求められることがあり、その場合は履歴事項が適合します。一方、口座開設等では代表者・所在地・商号等の現況確認が中心となり、現在事項で足りる場合もあります。いずれも、提出先の指定がある場合はその要件を優先します。
2)提出先(国・機関)と用途の明確化
- 国(ハーグ条約締約国か否かにより、アポスティーユ/領事認証の要否が分かれます)
- 機関名(銀行名/登記機関名/契約先企業名 等)
- 用途(KYC、設立登記、ライセンス申請、訴訟・仲裁 等)
用途が明確であれば、用語選定や表記統一の方針を「提出先で照合しやすい形」に寄せて整理できます。
3)提出形式・認証要件の確認(英訳のみ/翻訳証明/公証 等)
- 翻訳者要件:署名・連絡先・翻訳証明文(Certification)の要否
- 公証:署名の要否、署名者(翻訳者/依頼者等)の指定の有無
- 認証手続の類型:
- 原本にアポスティーユ/公印確認
- 翻訳文に公証+アポスティーユ
- 公印確認後に領事認証が必要(非締約国等)
外務省の案内では、私文書は外務省で直接の証明手続を行えず、公証人の認証および(地方)法務局長による公証人押印証明を経たうえで外務省手続へ進む流れが示されています。提出先の指定に応じて、適用される手続を整理しておくことが重要です。
4)必要通数と提出期限の確定
- 必要通数(原本・英訳それぞれ)
- 提出期限(出願締切/契約締結日/オンボーディング期限 等)
外務省の案内では、同一の証明書について複数通の認証申請を行う場合、提出先から必要通数を明記した要求文書の提示を求める運用があることも示されています。通数を早い段階で確定しておくことで、追加取得や再手続の発生を抑えられます。
5)最新性(発行日)と記載情報の整合
海外提出では、発行日について一定期間内(例:発行後3か月以内等)を求めることがあります。加えて、社名変更・本店移転等の直後は、提出先側の登録情報との不一致により確認に時間を要する場合があります。英訳では、会社名・住所・代表者名の表記を、提出先での照合に支障がない形で一貫して統一することが重要です。
6. まとめ|登記簿英訳は提出要件に沿って形式まで整える
登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の英訳は、訳文を作成するだけでは足りず、提出先が求める提出形式(翻訳証明、公証、アポスティーユ/公印確認、領事認証等)に適合していることが重要です。外務省の案内では、公印確認・アポスティーユは公文書に対する証明であり、私文書については公証人の認証および(地方)法務局長による公証人押印証明を経たうえで外務省の証明手続へ進む整理が示されています。提出先の指定に応じて、必要な手続を適切に選択することが実務上の要点です。
依頼にあたって確認しておきたい事項は、主に次の3点です。
- 必要な証明書の種別(履歴/現在/閉鎖等)
- 提出先(国・機関)および用途(契約、口座、設立、DD等)
- 認証要件の有無と内容(英訳のみ/翻訳証明/公証+アポスティーユ等)
これらが明確であれば、英訳は「読みやすさ」だけでなく、提出先での照合に耐える表記統一と用語の正確性を優先して整えることができ、差し戻しのリスクを低減できます。
なないろ証明書翻訳は、翻訳実務に精通した行政書士2名体制で、海外提出を見据えた形式面まで確認のうえ対応します。公証・アポスティーユの取得・申請代行についてもご相談いただけます。

